RECRUITING

JOB&PEOPLE日本サーモエナーの仕事と人

プロジェクトストーリー

一日も早く工場を
蘇らせるために
部門を超えた協働で、
泥に沈んだボイラに
火を灯す

某電子部品メーカー
ボイラ復旧プロジェクト

BACKGROUND

日本サーモエナーの主力製品であるボイラは、熱源装置として多くの工場の生産プロセスを陰から支えている。ゆえに、お客様が展開する事業への影響も極めて大きく、その先のお客様への影響まで考慮すれば、稼働が止まることの許されない設備と言える。しかし、機械である以上、絶対に故障しないということはあり得ない。できることは、可能な限り安全性の高い設計に尽力すること。そして、万が一の際に、速やかに再稼働できるよう最大限のリカバリーを行うこと。これは、製造販売だけでなくアフターフォローまで一貫して行う日本サーモエナーだからこそ果たせる使命でもある。そんな使命の大きさを体感した出来事がある。それが、2019年10月に発生した台風19号によるお客様の工場で起こった浸水被害からのボイラ復旧プロジェクトだった。

MEMBER

  • 伊藤 正孝

    技術統括本部 技術本部
    特機技術部長
    1988年入社

    入社後、ボイラ部門へ配属。その後、京都工場へ異動となり、水管ボイラや熱媒ボイラを担当。2005年、荏原ボイラ株式会社との合併に伴い、日本サーモエナーへ転籍。現在は特機技術部長を担っており、本プロジェクトでは直接現場に赴いて技術面からのサポートを行った。

  • 佐々木 勝

    生産調達本部 資材調達部長

    1987年入社

    入社後、ごみ焼却設備部門の技術部へ配属。その後、京都工場へ異動し、蒸気ボイラや真空式ボイラの設計開発を担当。営業やメンテナンス推進を経て再び真空式ボイラの設計開発に戻った後、日本サーモエナーへ転籍。現在は部品課長を担っており、本プロジェクトでは部品供給面からのサポートを行った。

  • 関根 寛輝

    汎用事業本部 東北支社
    仙台支店 郡山営業所
    2018年入社

    前職では自動車整備を担当しており、培ったスキルを別方面でも活かしてみたいとの想いから2018年12月に日本サーモエナーへ転職。入社後は郡山営業所へ配属となりメンテナンス業務を担当。本プロジェクトでは顧客折衝などの現場担当者としての役割を担った。

工場内の全機能が停止、
道路も町も水没し
工場へ伺うことすらできない。
現場には、思わず絶句するような
悲惨な状況が広がっていた

台風19号が来たのは夜中でした。雨風の音が激しく、被害も大きくなりそうだから用心しなければと思っていましたが、夜が明けてみるとその被害状況は想像以上でした。そんな中、お客様から一本の電話が入ったんです。「ボイラが止まってしまった。一度見に来てもらえませんか」。この第一報からプロジェクトが動き出しました。

対談風景

大きなニュースにもなっていて、私たちも東北の営業所やお客様のことを心配していました。特に、関根は当時、まだ入社してから1年も経っていない時期。研修で京都工場に来た際に顔を合わせていて、車が好きという共通の趣味もあったので、以前から気にかけていたんです。

当時はまだ入社したばかりだったので、お客様から電話が入ったときは、どう対応すればいいのか不安でいっぱいでした。その上、道路も通行止めで、そもそもお客様の現場にお伺いすることすらできない状況。2日ほどして、車がなんとか通行できるようになり、工場内へお伺いしました。当時のことは今でも覚えていますが、被害の深刻さに衝撃を受け、数秒間身動きが取れませんでした。目の前には、津波が去った後のような光景が広がっていたんです。場内を歩きましたが、このときは修理をするというイメージは浮かびませんでした。

関根さんから特機技術部へ支援要請があり、私も数日後に現場へ入ったのですが、大規模な震災の現場のようでした。私は阪神淡路大震災を経験していますが、そんな私でも思わず「ここまで酷いのか…」と言葉を失いました。しかし、困り果てているのはお客様。呆然としている場合ではないと奮起し、詳細な被害状況を関根さんと共に調べ始めました。

制御盤はほぼすべて水没、
しかし全交換の余裕はない。
わずか半年での全復旧に向けて、
修理という茨の道を選択

確認したところ、密閉性が高い製品であることも幸いし、一部を除きボイラ内への浸水はほぼ見当たりませんでした。しかし、その横に自立している制御盤に関しては、ほぼすべてが浸水。電気部品であるため、一度水に浸かってしまったのなら修理ではなく交換したほうが安心だろうと、制御盤を全交換する方向でお客様に提案することにしました。

ところが、ここで問題となったのが納期です。工場が止まっているということは、製品が製造できないということ。お客様としては一刻も早く稼働を再開しなければ事業の継続すら揺らぎかねない。遅くとも半年以内には再稼働させたいと要望をいただいたんです。しかし、半年以内にすべてを新たな製品に入れ替えるのは時間的に不可能と判断し、納期に間に合わせるため、10台以上に及ぶ水没機器を修理するという難題に挑むことを決めました。

対談風景

そうした難しい状況の中、制御盤にはお客様で必要な回路を追加されていたこともわかりました。どこにどんな部品が使われているかは、制御盤を開いてみないとわからない。一つひとつ部品を目視で確認しながら、水没しているのはどれで、そのまま使えるのはどれかを手作業でリストアップしていきました。

関根さんと伊藤さんの苦労は、目に見えるように伝わってきました。当初はボイラ入れ替えを想定して「ボイラの在庫はありますか?」という確認が来ていたのですが、それからすぐ膨大な必要部品のリストが送られてきたんです。これを全部手作業で確認しながらリスト化している姿を想像したら、なんとしても一刻も早く届けてあげなければと思いましたね。

定石を踏むよりも、
お客様や現場の仲間たちを
守りたい。
苦労を覚悟で、
手配ルートを新規開拓

佐々木さんたちに部品をお願いしてからは、ひたすら到着した部品の確認と振り分け、現地の作業員と都度打ち合わせを行いながら進捗管理に没頭しました。毎日数十数百という部品が届く上、パッと見ただけでは区別がつかないような部品も多くあります。しかも、振り分けを間違えれば、動作不良を招くだけでなく、作業員の混乱や作業の中断にも繋がります。神経をすり減らしながら、丁寧かつ迅速に捌いていきました。

対談風景

関根さんの苦労は痛いほどわかっていたので、こちらとしても言われた部品を手配するだけでなく、できる限りのサポートをしました。例えば、リストになかったとしても、この部品を要求しているということは、その関連部品も必要じゃないかとこちらからも確認しました。また、浸水現場で作業することになるだろうから、水に触れてショートし、部品がダメになってしまう可能性を考慮して、余裕を持って在庫を確保しておくなどの備えもしていましたね。

修理方針としても、納期に間に合わせつつ関根さんや修理作業者の負荷を減らせるように工夫しました。中でも勇気が必要だった決断が、配線を再利用するというものでした。当然交換したほうが安心ではあるのですが、組み立て時の工数やミスをしたときのリスクも考えて、お客様の了承も得た上で再利用を決めたんです。もちろん現場では乾燥作業を徹底してもらったのですが、きちんとショートせずに動くかどうか最後まで不安は残りました。

部品の手配ルートに関しても、本来であれば既存の仕入れルートを使うのが定石ですが、それでは手配できないことや遅れることも想定されたため、苦労を覚悟で考え得るあらゆる手段で手配ルートを新規開拓しました。お客様から『重複してもかまわないので、必要な部品はさまざまなルートで手配してほしい。すべて買い取る』と言っていただいたことも思い切った行動が取れた要因でしたね。

半年目標のところ、
4ヶ月での再稼働を実現。
お客様からの感謝の言葉と、
社内表彰も勝ち取ることができた

佐々木さんや伊藤さんをはじめとした皆さんの協力もあって、無事全機再稼働に成功。半年以内でと言われていましたが、4ヶ月ほどで運転確認まで完遂。お客様からも「無事動いたよ、問題なく稼働できそうです。本当にありがとう」との言葉をいただきました。あのときの達成感は、きっと死ぬまで忘れないと思います。

懸念していた配線のショートも起きず、無事稼働して私も安堵しました。ただ、最初に湧き上がってきたのは「関根さん、本当にお疲れ様でした」という気持ちでした。まだ入社したばかりなのに、これほどイレギュラーで大変な案件に主担当として対応するのは相当な苦労を伴います。しかも関根さんは実直な人ですから、どんなに細かいところにも手を抜かない。心配ではありましたが、そんな関根さんだからこそ成功したプロジェクトであり、お客様からの信頼を勝ち得ることができたんだろうと思います。

対談風景

私も伊藤さん同様、関根さんの頑張りが功を奏して良かったなという想いです。プロジェクトメンバーとして関わらせてもらったおかげで、本当の意味での部署を超えた連携というものも肌身をもって体感でき、社内表彰でも名前を挙げていただき、関根さんには感謝しています。

私のほうこそ、佐々木さんや伊藤さん、そして支えていただいた皆さんに深く感謝しています。社内表彰も、関わってくださった方全員で受賞したものだと思っています。何より嬉しかったのは、営業成績などではなく、お客様のために尽力したことが評価されたこと。この会社は、本プロジェクトのような想定外の事が起きた場合でも、お客様のために行動することに全力で臨むことができるようサポートしてくれる体制があるのだと、いま改めて感じます。これからも、お客様を支える良い関係を築くことができる存在になりたいと思っています。

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